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【Numata’s special コルク抜き、ソムリエナイフの歴史】

カテゴリ:コラム 投稿日 2021/10/23

こんにちは、恵比寿にあるワインショップ、ワインマーケット・パーティーの沼田です。


今回はワインに使われるソムリエナイフなど、コルクスクリューの話を。


 


コルク抜きの原型は、おそらく17世紀、銃筒を掃除する為に使われていたスクリュー(螺旋状の道具)か、それを改造したものに違いないとされています。


そのスクリューは先込め式銃や拳銃用のさく杖(銃身の中を手入れする細長い金属棒)の先に付いていて、詰まった銃弾や不発の弾薬を取り除くのに、ちょうどワインのコルク栓を抜くのと同じ要領で使われていました。


屋外にあっては瓶の中にあるコルクを抜く行為は容易なものではなかった時代があったことから、この偶然の一致は、兵士や猟師達を大いに喜ばせたのではないでしょうか。


 


それよりも以前の時代、ワイン栓の原型はなんと液体でした。


ギリシア人はワインを運ぶ時、ボトルに封をする方法として松脂を使用していました。


これは今でもその独特な風味で知られるレツィーナ・ワイン(松から分泌される天然樹脂の風味がついた白ワイン)として痕跡を残しています。


 


ローマ人はオリーブオイルをワインの上層に注いで空気を遮断する方法を思いつき、ワインを飲む時はチューブをオリーブオイルの層の下に差し込み、飲みたい分だけ吸い上げて飲んでいました。


ワインの量がボトルの肩口のところまで下がってきても、オリーブオイルは薄く広がるだけですから、依然として栓の役割も果たします。


なるほど、ですよね。


その後徐々に固形物を用いた栓が主流になっていきました。(大体が粘土や木片などを布切れで包み込んだものだったそう)


 


200年程前までは、コルク栓を利用するというやり方は数種類行われていた方法のひとつにすぎませんでした。


当時、コルク栓は端の方がボトルに押し込まれているだけだった為、うまくすれば素手で栓を抜く事ができました。


形状が直線的で縦長のガラスボトルが主流になったころ、空気との遮断効果を高めるには、コルクをボトルの中にしっかりと押し込める方がよいと考えられるようになり、それを抜き出す道具が開発され、改良されていきました。


 


コルク抜きの特許は、1795年にイギリスのサミュエル・ヘンシャルによって初めて認められたとの事。


それは皆様がご存知の「T字型」で、取っ手にスクリューが付いたお馴染みの形。


しかしながら、このスタイルでは使う人が自分の力だけで引き抜かねばならず、時にはプロレスラー並みの怪力が必要でした。


 


1802年以降、この欠陥を克服すべく、もっと洗練されたデザインが次々と考案されていきます。


2重、3重構造のスクリュー式のもの、歯車を使ったもの、クランクと滑車を使ったものも登場しました。


コルク抜きに一番重要な点は、スクリューがゆったりとした螺旋をきれいに描いている事、鋭く尖った先端を持っている事です。


そういうスクリューなら、コルクの中にスムーズに入り込み、しっかりとコルクをとらえる事ができます。


最悪なのはスクリューの部分がまるでドリルのような形になっていて、コルクの真ん中にただ穴を掘るだけで、引き抜こうとするとコルクがちぎれてしまうようなものです。


こういった類のスクリューは2本のアームを折るようにしてコルクを持ち上げて抜く、ウィングタイプに良く見られます(スクリューがとても太い)。


 


本来はいい道具のはずなのですが、これではもろくなってしまった古いコルクには使用ができませんし、新しいコルクにも使い勝手が悪いと思います。


 


現在、一番良く目にするコルク抜きは、ポケットナイフ型のソムリエナイフでしょう(シャトー・ラギオールなどの「ナイフ」「スクリュー」「栓抜き」などが一体になった物)。


このタイプはスクリューを入れ、テコの支点になる部分をボトルの縁に引っかける事ですばやくコルクを抜く事ができます。


折りたたんで収納でき、持ち運びにも便利という事で一般的に「ウェイターの友」と呼ばれています。


 


そしてもう1つ、よく見かける物に「プロングタイプ(はさみ型)」があげられます。


取っ手に2枚の薄い刃がついたもので、皆様も1度は見たことがあるのではないでしょうか?


「どう使うんだろう?」と思っている方も多いと思います。


これにはスクリューが無いので、その2枚の刃をコルクの両脇にすべりこませ、コルクを刃で挟んでひねりながら抜くというものです。


イギリスでは「執事の友」と呼ばれています。


なぜなら、これを使えばコルクに傷をつけずに抜く事ができ、ご主人の高額ワインから一杯失敬し、安いワインで再びボトルを満たしてコルクを戻しておく・・・なんて事も可能だからです(実際にやってみると難しいですが・・・)。


それを揶揄した俗称ですね。


 


一般的にはコルクが柔らかくなってしまっているような30年~40年以上経った古酒を開ける際に使用する事が多く、通常のソムリエナイフと組み合わせてコルクをしっかりと掴み抜栓する事もあります。


 


コルク抜きには何百ものバラエティがありますが、なかには“カラクリ”を使ったものもあります。


コルクに針を差し込み、二酸化炭素や空気、フレオンといったガスを送りこんで、その圧力でコルクを押し出させるというものや、バネの原理を応用してスクリューを一定方向に回し、コルクを抜くという仕掛けのものなどもあります。


 


今ではレバーを下げて上げるだけでコルクが抜ける物や、電動のワインオープナーといった物も出てきているので、誰にでも少ない力でコルクを開ける事ができるアイテムも増えてきています。


それと、古い時代のアンティーク・コルクスクリューはコレクションの対象にもなっているようです。


世界は広く「コルクスクリュー・マニア交流会」という、会員を“50人”に限定した団体もあるほどで、この手の趣味の頂点といえるでしょう。


 


この話を聞いた時、バローロの町にあるワインショップの店主に200年以上前からのコルクスクリューコレクションを見せて貰った事を思い出しました(セラーの奥に錠のかかった部屋があり、100種類近い古いコレクションが置いてありました)。


凄いコレクターもいるものです。


以上のように様々なコルクスクリューが存在しますが、やはり自分で使用するのであれば手に馴染んだものが1番。


少し贅沢をしてラギオールやライヨール、国産のアスロなどのソムリエナイフを買っておくと、10年・・・いやもっと長く使用できるので、1本は持っておいても良いかもしれません。


 


優れた道具といえども、たまにはうまくいかない事もありますよね。


コルクが奥へ入ってしまったり、砕けてしまったり・・・。


そんな時はどうするか?


もしコルクがスクリューの届かない位置まで入り込んでしまった場合には、コルクにあまり傷をつけないようにゆっくりとボトルの中に押し込んでしまうのが最善策です。


それからコルクの香りがワインにうつってしまう前になるべく早くデキャンターに移しましょう。


もしもコルクが半分程度砕けてしまった場合にはスクリューを斜めに差し込み、瓶の側面~コルクに向かって2~3度回してみましょう。


たいていはコルクを動かすのに十分なほどしっかりと食い込んでくるはずです。


それでも駄目ならあきらめて、コルクをボトルの中に押し込み、素早くデキャンタージュする方法をとってみてください。


 


「天然コルク」に「圧縮コルク」「樹脂コルク」や「プラスチックやゴム製のコルク」など今では色々なコルクを目にするようになってきました。


タイプは違えど、コルクスクリューやソムリエナイフはワインを飲む上で必要なアイテムの一つ。


「古酒」を開けるのも「失敗」するのも、ワインの楽しみの一つとして、色々なコルク抜きを試しに使って抜栓してみるのも面白いのではないでしょうか?


自分に合ったタイプのワインオープナーを探してみてください。


それではまた。


 


 


 


 


【執筆】沼田 英之


WINE MARKET PARTY 店長


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恵比寿ガーデンプレイスB1F


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